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TCFD提言に基づく情報開示

TCFD提言への取り組み

TCFD 当社は、企業理念や長期ビジョンのもと、省エネルギーやクリーンエネルギーに関連する施設や災害に強いインフラ設備の施工など、総合設備工事会社としての技術力を生かして、サステナビリティをめぐる様々な社会課題の解決に取り組んでいます。
 また、当社は、気候変動を含む環境問題への対応を、重要課題(マテリアリティ)の一つと認識し、2021年12月に、環境経営に関する中長期目標を設定するとともに、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に賛同しました。
 今後も持続可能な社会の実現に向けて取り組みを充実させていくとともに、TCFD提言で推奨される枠組みに基づき情報開示を行ってまいります。

ガバナンス

 当社では、気候変動対応への取り組みをはじめとしたサステナビリティをめぐる諸課題に対応するため、2022年4月に社長を委員長とし、委員長が指名した役員及び関係部門長で構成される「サステナビリティ推進委員会」を設置しました。
「サステナビリティ推進委員会」では、サステナビリティ推進の基本方針や重要課題(マテリアリティ)の特定、基本方針に基づく実行計画の立案・推進・評価などについて審議します。(原則として年2回以上開催)
 また、その内容については、経営会議に付議・報告するとともに、その中で重要な事項については取締役会への付議・報告を行います。
 取締役会は経営会議に対して、また経営会議はサステナビリティ推進委員会に対して、気候変動をはじめとするサステナビリティに関する計画や施策をモニタリングし、必要な指示・助言を行います。

ガバナンス体制図

ガバナンス体制図

戦略

①シナリオ分析の前提条件

 気候変動関連のリスクと機会が当社の事業や戦略、財務計画に与える影響を評価し、対応策を検討するために、シナリオ分析を実施しました。
分析にあたっては、下記の3つの前提条件を選択しました。
今回は「ステップ1」の前提条件で検討を行いましたが、ステップ2以降は、状況に応じて適宜見直しつつ情報開示の充実を図ってまいります。

ステップ1 ステップ2 ステップ3
対象範囲 九電工単体、
国内全セグメント事業
国内連結子会社を含む九電工グループ、
国内全セグメント事業
海外連結子会社を含む九電工グループ、
全セグメント事業
基準年度 2030年度 2040年度 2050年度
シナリオ選択 2℃(※1)及び4℃ 1.5℃及び4℃ 1.5℃及び4℃

(※1) 今後、1.5℃シナリオによる分析と対応策の検討を進めてまいります。

  • シナリオについては、「2℃シナリオ」としてIEA(注1)のSDSシナリオ(Sustainable Development Scenario)及び、IPCC(注2)のRCP2.6シナリオを選択しました。
  • また、「4℃シナリオ」としては、IEAのSTEPシナリオ(Stated Policies Scenario)及び、IPCCのRCP8.5シナリオを選択しました。

(注1) IEA :International Energy Agency、国際エネルギー機関
(注2) IPCC : Intergovernmental Panel on Climate Change、気候変動に関する政府間パネル

②シナリオ分析の進め方

 分析にあたっては、関係部門のメンバーで構成するワーキングチームを立ち上げ、基準年度である2030年度において想定される外部環境の変化について、TCFD提言が推奨する分類項目ごとに、リスクと機会の検討を行いました。

(出所) 環境省「TCFDを活用した経営戦略立案のススメ ~気候関連リスク・機会を織り込むシナリオ分析実践ガイド Ver.3.0 ~」より、当社作成

特定作業の手順

フロー図

③シナリオ分析結果と対応策

 2℃シナリオでは、先進国および一部新興国においてカーボンプライシングが導入される社会を想定、4℃シナリオでは、先進国では現状の気候変動対策が続き、世界的にGHG排出量の削減が進まない社会を想定しました。
 2℃シナリオでは、日本国内でも炭素規制が強化されることにより、エネルギーコストが増加、資材についても調達コストが上昇すると考えられます。
 他方で、脱炭素への動きが加速する中で、再生可能エネルギーや省エネルギーに関連するビジネスの需要が高まることを期待しています。
 4℃シナリオでは、再生可能エネルギーや省エネルギーに関連するビジネスの需要は拡大するものの、2℃シナリオと比較すると伸び率は緩やかにとどまります。
 気温上昇や台風、洪水などの気象災害の激甚化の程度については、2030年時点では2℃シナリオとの差はそれほど大きくないと想定しています。
 シナリオ分析の結果を踏まえ、気候変動に関わるリスクを最小化し機会を最大化するための対応策を検討しました。
 脱炭素・低炭素に関わる規制強化に対しては、化石燃料由来のエネルギー消費低減への各種取り組み強化、省エネルギー設備の導入等を通じ対応します。
 また、平均気温上昇に伴う労働環境悪化に対しては、作業現場に暑熱対応設備を導入するなどの作業環境の改善を行うとともに、働き方改革も積極的に進め、快適な労働環境の整備を行ってまいります。
 一方で、当社が展開する事業によって脱炭素・低炭素化への貢献を積極的に進め、同時に事業の成長を実現します。
 創エネルギーおよび省エネルギー関連工事に関する新技術の開発や技術力の向上を加速し、需要拡大に対応可能な組織・体制を構築します。
 既存の事業領域に留まらず、脱炭素・低炭素化、循環型社会の形成に向けた新たな事業領域の開拓に取り組みます。
 また、防災・減災対策需要の拡大に対応していくとともに、当社の技術力やノウハウを活用して、災害に強い街づくりの提案を行ってまいります。
 気象災害発生時には、早期復旧に最大限貢献すべく、設備や技術の開発とともに、社内組織の整備と関係機関との連絡体制強化を進めます。
 今後もシナリオ分析を定期的に実施し、気候変動リスクと機会を把握し対応策を講じ、当社の事業計画に反映させてまいります。

カテゴリ No. 想定される財務への影響 影響度 影響
期間
対応策
2℃ 4℃
移行リスク カーボンプライシング(炭素税)の導入 1 炭素税導入によるコストの増加
(エネルギーコスト、資材調達コスト)
中長期
  • 化石燃料由来のエネルギー消費量減少への取り組み推進
  • 高効率空調機器への更新、省エネルギー設備機器の導入、AIを活用した空調コントローラの開発と導入
  • Q-mast(※1)と連携した資材調達システムの構築
  • 最新の資材価格情報の収集強化と関係者間での迅速な共有
2 再エネへの変換に伴う設備投資の増加 短中期
  • 費用対効果や優先度を踏まえた効率的な設備投資の実施
  • 九電工EMS(※2)の導入検討
  • 再エネを利用した水素製造・貯蔵、排熱利用の検証
リサイクル規制等 3 サーキュラーエコノミー(循環経済)の進展に伴う資材調達コストの増加 中長期
  • Q-mast(※1)と連携したリサイクル資材の調達ルートの構築
  • 3R(リデュース、リユース、リサイクル)の推進
低炭素技術、製品への置き換えコストの増加 4 新たな技術獲得のための研究開発コストの増加 短中期
  • 低炭素化・脱炭素化・リサイクル技術等の研究の推進
  • 産学連携によるイノベーションの創出とスタートアップ企業とのタイアップ
  • 環境省やNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の補助金活用
  • 脱炭素に積極的な企業や自治体との共同FS事業(事業可能性検証)等の実施

影響度度 想定される当社事業への財務的インパクトについて、「大」「中」「小」の3段階で評価。
影響期間(影響の出現が想定される時間軸)・・・短期:2022年~2025年、中期:2026年~2030年、長期:2031年~

(※1)Q-mast     当社の連結子会社で、主な事業内容は、電気設備・空調管設備の工事用資材及び機械器具の販売。

(※2)九電工EMS  建物や施設側ではなく、再生可能エネルギー発電側のエネルギー・マネジメント・システム。
複数の発電源(太陽光・風力・小水力等)を総括制御でき、蓄電池とあわせて電力需要側に24時間連続で安定送電するシステム。
離島等のぜい弱なマイクログリッドへも電力を安定的に送電でき、ベースロード電源として活用できる他、日本国内では災害時の電力確保(レジリエンス)のみならず、平常時も建物へ再生可能エネルギー100%で供給するなど、防災の枠を超えた幅広い提案が可能。

カテゴリ No. 想定される財務への影響 影響度 影響
期間
対応策
2℃ 4℃
物理リスク 急性 異常気象の激甚化 5 気象災害により被災した自社施設や工事現場に係るコストの増加 短中期
  • ハザードマップや防災・減災対策の最新情報の収集
  • 高リスク地域に立地する施設のリスク低減策の検討
  • 災害発生時における施工協力会と一体となった施工協力体制構築の検討
6 災害発生に伴う自社太陽光発電設備の損壊 短中期
  • 危険箇所の点検と災害未然防止対策の実施
慢性 平均気温の上昇 7 工事現場の作業環境悪化による労働者不足や生産性低下に対応するためのコスト増 中長期
  • 作業現場における熱中症や健康被害の発生を抑制する新たな暑熱対策の検討・導入
  • 適正な労務管理の徹底と施工従事者支援体制の構築
  • 学生に向けた当社の魅力発信、企業PRの強化
  • 建設RXコンソーシアム(※3)の先進的取り組みの検討・導入を推進
8 自社太陽光発電設備での、気温上昇による発電量減少に伴う売電収入の減少 中長期
  • 遠隔監視モニタリングによる発電量の測定、異常数値や故障箇所の早期発見

(※3)建設RXコンソーシアム  2021年9月に、ゼネコン16社が立ち上げた組織。業界の生産性と魅力の向上を目的として、建設施工ロボットやIoT分野の技術開発協力など、建設現場の高効率化や省人化に取り組む。
RXは、Robotics Transformationの略。2022年11月22日時点で、正会員27社、協力会員112社(当社は協力会員)

カテゴリ No. 想定される財務への影響 影響度 影響
期間
対応策
2℃ 4℃
機会 低炭素排出商品及びサービスの開発・拡大リサイクル規制等 1 創エネルギー関連工事及び事業の需要拡大に伴う売上・利益増
(PPA含む太陽光発電、陸上・洋上風力発電、バイオマス発電、EMS等)
短中期
  • 需要拡大に対応できる社内組織体制の強化
  • 新技術の開発及び技術力の向上
  • 自社保有の再エネ設備の活用(FIT終了後)
  • 最適な省エネシステム提案の促進
  • 下水処理施設や民間工場における水再利用システムの計画・提案の促進
2 省エネルギー分野の需要拡大に伴う売上増
(エネルギー効率向上(ES)工事、EV充電設備、ZEB等)
短中期
3 水再利用関連工事の需要拡大に伴う売上・利益増 短中期
次世代技術の普及 4 次世代技術を活用した新規事業の推進 中長期
  • 新規事業への社内支援体制の構築
防災・減災・国家強靭化への取り組み 5 災害発生時の早期復旧への貢献 短中期
  • 早期災害復旧に対応できる社内組織及び関係機関との連絡体制の強化
  • 早期復旧に貢献する作業設備やツールの開発
  • 九電工EMSの提案
6 気象災害の頻発化・激甚化に対応する防災・減災対策需要の拡大に伴う売上増 中長期
  • 需要拡大に対応できる社内組織体制の構築
  • 災害に強い街づくり(防災・減災対策)に関する自治体への技術提案

リスク管理

 気候変動が当社にもたらすリスクの識別と評価、並びにリスクへの対応策の検討は、環境経営推進室が中心となり、組織横断的な議論を経て、サステナビリティ推進委員会で審議しています。
サステナビリティ推進委員会で審議した内容は、必要に応じて経営会議、取締役会への付議・報告を行っています。
TCFD提言に沿って特定した気候変動関連のリスクと機会については、各対応策を中期経営計画に組み込んだうえで、各部門・各支店の方針や事業計画に展開し実践するとともに、定期的な見直しを行い、リスクの回避・低減と収益機会の拡大を目指してまいります。

指標と目標

2030年:CO2排出については、原単位50%以上の削減(2013年比)を実現します。2050年:カーボンニュートラルを実現します。"

原単位 =(Scope1+Scope2)÷ 九電工単体売上高 (t-CO2/億円)

目標達成に向けた取り組み項目

  • 九電工アカデミーへのEMS導入
  • EV車両とEV充電器の配備(置き換えできない施工用特殊車両は対象外)
  • 社屋関連設備への環境配慮型設備投資
  • 卒FITの活用(事業期間終了資産)
  • 産学連携による研究開発 等

売上高1億円当たりのCO2排出量推移

推移グラフ

CO2排出量

  単位 2013年度① 2019年度 2020年度 2021年度 2022年度② 対基準年度
②ー①
  2030年度
  Scope1 t-CO2 9,059 7,670 6,816 6,947 7,454 ▲1,605  
Scope2 t-CO2 5,677 5,094 5,163 5,262 6,080 +403  
九電工単体 計 t-CO2 14,736 12,764 11,979 12,209 13,534 ▲1,202  
売上高 億円 2,597 3,651 3,374 3,226 3,330 +733  
原単位 t-CO2/億円 5.67 3.50 3.55 3.78 4.06 ▲1.61   2.83
原単位削減率
(2013年度比)
▲38.2% ▲37.3% ▲33.3% ▲28.3%   ▲50%

原単位 = (Scope1+Scope2) ÷ 九電工単体売上高 (t-CO2/億円)

Scope1 : 事業者自らによる温室効果ガスの直接排出
Scope2 : 他社から供給された電気・熱・蒸気の使用に伴う間接排出
Scope3 : Scope1、Scope2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)
※今後、Scope3を含む対象範囲の拡充に取り組んでまいります。

サステナビリティ

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